2012年6月9日土曜日

Notebook: てんかん発作と似て非なるもの | 名古屋市【愛知県青い鳥医療福祉センター】


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内容

てんかん発作をみたら

 異常な状態が突然始まる現象を発作といいます。

 発作はさまざまな原因で起きます。

 てんかん発作はその原因の一つにすぎません。ところが、発作がみられると、鑑別診断の筆頭にまず挙がってくるのがてんかん発作です。てんかん発作はどの年齢層にもみられますし、発作症状も多彩で、そして、なによりも発生頻度が高いためです。

 しかし、そのために、てんかん発作でないものまでが、てんかん発作と勘違いされることになります。事実、てんかんを専門とする病院やクリニックにてんかんとして紹介されてくる「難治てんかん患者」さんのうち、かなりの方が実際にはてんかん発作をもっていないという報告がされています1)。

 本章ではてんかん発作ではない「発作」について述べます。しかし、発作をきたす疾患あるいは病態は数限りなくあります。それを全てご説明することは上可能ですし、そんなことをすれば、逆に、なにがなんだか、わけがわからなくなってしまうでしょう。そこで、ここでは、てんかん発作と誤診されやすい「てんかん発作と似て非なる」疾患、病態に対象を絞り、そのうちの代表的なものについて触れることにします。

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問診

 しかし、その前に、発作性疾患における問診の重要性について改めて強調しておきたいと思います。

医者といえどもてんかん発作を実際に目撃できる機会はめったにありません。救急外来は別ですが、一般の外来診療では、発作を主訴に受診される患者さんのほとんどが、診察室におみえになるときには発作が止まって、いつもとさほどかわらぬ状態に戻っています。もちろん、それでも、一応、発作に関連した徴候がないか、診させてはいただきます。さらに、頭部MRI、CTなどの神経放射線画像検査、脳波、血液検査などの臨床検査も行います。しかし、発作の診断という面からいえば、そうした診察所見、検査所見は間接的なものにすぎません。発作そのものを示しているわけではありません(脳波検査時、偶然、発作時脳波が記録されるようなことがあれば別ですが)。発作の診断は、発作と発作前後の状況をご本人と発作を目撃し� � �人から可能な限り聞きだすことによってしかなしえません。問診が唯一の診断法といっていいのです。このことは、どれだけ強調しても強調しすぎることはありません。

 しかし、てんかん発作に習熟していないと、脳波やMRIなど「客観的な」臨床検査、画像検査のほうに目がいってしまい、発作症状の問診がおろそかになることがあります。私も経験がありますが、てんかん診療の経験が乏しく、発作症状を充分聞きだす知識も技術も備えていない医者は、どうしても検査に頼ってしまうのです。そして、これが誤診の最大の原因になります。明らかなてんかん発作はないのに、脳波に「てんかん放電」がみられるという理由からてんかんと診断される、といった事態を招きかねないのです。臨床検査、画像はあくまでも補助診断にすぎません。

 発作性疾患の診療においては、問診が出発点であり、終着点なのです。

 てんかんの診療に限りませんが、問診でもっとも重要なのは、充分、時間を確保することです。しかし、一般病院における、忙しく騒然とした外来診療環境では、これは、至難の業です。診療を待ってみえる待合室の患者さん多さ(予約制の場合は、予約時間内に終わらなければならないというプレッシャー)に追い立てられ、時間を確保するということがなかなかできません。しかし、時間に余裕がないと、充分に話を聞くことができないですし、へたをすると、医者は自分の考えを押しつけ、患者さんやご家族のおっしゃる内容を誘導して、間違った情報を得てしまうことさえありえます。

 これも、以前述べたことですが、問診においては、医学用語を避け、なるべく日常の言葉で発作内容を話していただくことも大事です。医者のほうも、話していただいた内容を具体的に記載するよう心がけなければなりません。

 たとえば、意識の有無については「声をかけても反応がなかった」といったように、話された内容をそのまま書き留めるべきです。医者が「意識がありましたか?」と尋ね、患者さんや患者の家族の方が「なかった」と答えられ、カルテには「意識(ー)」と記載されるなどといったことが実際の診療の場では結構あります。しかし、てんかんの診療としては、これは、最低です。なぜなら、これでは意識をどのように確認したかわかりませんし、のちに、意識があったかどうかも検証できません。

 けいれん症状についても、「強直発作」といった「医学用語」を使うことが誤解のもとになることを以前お話しました。「手足がつったように伸ばして硬直させ、体を折り曲げ、目は上を向いていた」といった具合に具体的な症状を話していただき、医者のほうも、それをそのまま記載することが望ましいのです。

 発作症状では、発作の始まりがもっとも大事です。ですから、私自身は「発作が始まる前に発作が来そうだとわかりますか」といった質問を必ずするようにしています。患者さんやご家族は、四肢の強直、間代などの「派手な」運動症状、あるいは、「目がうつろ」になって「反応がなくなる」ような意識消失に目がいってしまいがちです。そうした症状が心配をかき立てるのですから当然です。しかし、そのために、こちらからお聞きしないと、視覚症状などの感覚性単純部分発作や前兆などの「軽微な」「どうでもいい」症状はなかなか話してくださいません。しかし、四肢の痙攣といった派手な症状より、視覚症状などの軽微なものの方がてんかん発作の診断においては大事です。なぜなら、それが、異常放電が始まる脳の� � �置を指し示しているかもしれないからです。さらに、発作の始まりから発作症状を順序立てて聞くことができれば、ある皮質にてんかん発射が出現し他の皮質へ拡延していく有様をありありと思い浮かべることもできるかもしれません。そうなれば、しめたもので、てんかん発作の診断はついたも同然です。そのような症状の進展は、てんかん発作以外には考えられないからです。

 もちろん、欠神発作やミオクロニー発作のような全般発作ではそのような発作の進展はみられません。しかし、その場合でも、発作症状をきちんと聞かなければ、欠神発作やミオクロニー発作などの診断ができないことに変わりはありません。

 問診による発作の確認は初診時にも必要ですが、なかなか発作がコントロールされない「難治てんかん」の場合、再診時にも大切です。初診時から数ヶ月、数年を過ぎると、医者の方も、時間に追われ、問診内容が発作の有無の確認にのみに終始し、肝心の発作内容を聞くことを怠りがちになります。しかし、きちんと確認せずにいると、患者さんや保護者の方が把握している発作内容とわれわれ医者が理解している発作内容がずれてしまうおそれがあります。発作を繰り返すときこそ診療内容を見直すチャンスですから、面倒でも、発作の内容をその都度伝えてください。そうすると、間違いも少なくなります。

 もちろん、問診だけで100%正確な鑑別ができるという保証はありません。神ならぬ身ですから、どんな名医でも誤診ゼロということはありえません。しかし、問診を軽視し、臨床検査や画像検査などの「客観的な科学的証拠」へ過度に依存しますと、誤診率をさらに高めてしまいます。100%の正解はえられないということを念頭に置きつつ、なるべく正解に近づけるよう、診療のたびごとに発作内容をきちんと確認する努力を怠らないことが大事です。どうしても判断がつかないときには、脳波―ビデオ同時記録で「発作」が本当にてんかん発作なのか確認する必要がでてくることもあります。脳波-ビデオ同時記録をきちんと行うことができる病院はそれほど多くありませんから、必要があれば、てんかんセンターのような専門施設� � �評価をお願いすることになります。

 フランスのてんかん学の大家、アイカルディは「てんかん発作と非てんかん発作の鑑別は理論上も実際上も難しいが、経験豊富な臨床家は発作を見ただけで、いや、それどころか問診だけで、てんかん発作の匂いを嗅ぎ分けるものだ」と書いています2)。アイカルディのような大家だからこそ言える言葉で、わずかな経験だけでそのような域に達したと思いこむのは危険ですが、日々の診療において発作内容を誠実に聞き出す訓練を繰り返し、そうした域に達するよう努力することが医者にとっては大事だろうと思います。

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発作分類

 どのようなてんかん発作症状があり得るか充分心得ておくことが、問診をする上での前提条件であることはいうまでもありません。

 てんかん発作には多彩な症状がみられますし、部分発作ではとくにそれが顕著です。しかし、正常な生理現象は無限の様相をみせますが、異常現象は限定的な現れ方をします。このことは、てんかん発作についても当てはまります。てんかん発作の多岐にわたる多彩な症状も、共通点を拾いだせば、限定された範疇に分類することがある程度可能です。

 てんかん発作にかんしては、いままで、さまざまな分類法が提唱されてきました。しかし、現在、日本も含め世界中で広く受け入れられているてんかん発作分類は1981年にとり決められた国際てんかん発作分類です3-4) (2010年に新たな分類が国際てんかん連盟から提案され、今後はこの分類が広まる可能性がありますが、提案がなされてから日が浅く、てんかんに関する概説書でも取り上げられていることは少ないので、ここでは旧分類にそってご説明します)。この分類は2分法を基本にしています(表1)。想定されるてんかん発射が部分起始かそれとも左右対称性起始かで2つに分け、このうち、部分発作については、発作中の意識消失があるかないかで、さらに2つに分けるのです。この国際てんかん分類はてんかん発作に関する世界共通言語といってもいい分類です。その具体的内容については「てんかんとは何か?」でご説明いたしましたので、確認してください。ご自分の(ご家族の)発作の発作分類については、それがどういう位置づけに� � �るのか知っておくためにも、担当医に一度確認されるといいでしょう。

 ただし、国際てんかん発作分類といえども、あくまでも人為的なものにすぎません。これによっててんかん発作をすべて、もれなく分類できるわけではありません。どれに入れていいのか判断に困る発作も少なくありません。それに、十分な発作情報が得られていないときには、当然、分類は不可能です。ところが、分類に囚われ、目撃された発作内容を分類に無理矢理当てはめようとして実際の発作を歪んだ眼鏡でみてしまうということがときとしてあります。もちろん、それでは本末転倒です。国際分類を参考にしながらも、実際のあるがままの発作症状を検討して、発作の位置づけを考えることが大事です。

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ILAEてんかん発作分類1981年改訂 3)

表1 ILAEてんかん発作分類1981年改訂

部分(焦点、局所)発作 全般発作

単純部分発作

運動徴候を呈するもの:
マーチを示さない焦点運動発作、マーチを示す焦点性運動発作(ジャクソン発作)、偏向発作、姿勢発作、音声発作
体性感覚あるいは特殊感覚症状を呈するもの:
体性感覚発作、視覚発作、聴覚発作、嗅覚発作、味覚発作、幻暈発作

雑部分発作

単純部分発作で始まり意識減?するもの
単純部分発作で始まり意識減?するもの、自動症を伴うもの
意識減?で始まるもの

①意識減?のみのもの
②自動症を伴うもの

部分発作から二次性に全般化するもの


胸膜高血圧とは何か

単純部分発作が全般発作に進展するもの
複雑部分発作が全般発作に進展するもの
単純部分発作が複雑部分発作を経て全般発作へ進展するもの

1. 欠神発作

1. 定型欠神
2. 非定型欠神

2012年6月3日日曜日

生活習慣病指導管理料について


生活習慣病指導管理料について

「生活習慣病指導管理料」について

『「生活習慣病指導管理料」は,高脂血症,高血圧症又は糖尿病を主病とする患者の治療においては生活習慣に関する総合的な指導及び治療管理が重要であることから設定されたものであり,治療計画を策定し,当該治療計画に基づき,服薬,運動,休養,栄養,喫煙及び飲酒等の生活習慣に関する総合的な指導及び治療管理を行った場合に,許可病床数が200床未満の病院及び診療所である保険医療機関において算定する。』もので、従来「運動療法指導管理料」とされていた老人以外の慢性疾患指導の項目が名前を変えて「生活習慣病指導管理料」となったものです。高脂血症・高血圧症・糖尿病の3つの疾患で、指導管理等、検査・投薬・注射の費用はすべて包括したものです。

 「運動療法指導管理料」の時には、「運動療法について相当の経験を有する医師が運動療法に係る指示せんを交付し、総合的な治療管理を行った場合」という変な縛りがあった事と、包括点数が今より200点少なかったため、臨床の現場ではほとんど算定されなかったと思います。

 今回の「生活習慣病指導管理料」の点数は下記のような設定となっています。   

表-1
院外処方
院内処方
差(薬剤費)
高脂血症

1050点

1550点

500点

高血圧症

1100点

1400点

300点

糖尿病

1200点

1650点

450点

  1点10円

 「生活習慣病指導管理料」については月1回以上適切な指導と治療管理が行われなくてはならず、また3ヶ月に1回の「療養計画書」を発行しなければなりません。

 さて、この算定の是非と問題点についてはネット上でも、臨床の現場でも議論がなされています。
 今回の診療報酬改定では診療費・検査・薬剤費・入院費など軒並みダウンの医療費削減の中でただ一つ、「生活習慣病指導管理料」は診療報酬がアップした項目といえます。その意味では多くの開業医が期待した点数ですが、その選択には大きな問題がることが分かりました。

 包括点数としては現在の(突然14年10月廃止予定)老人慢性疾患外来総合診療料(外総診)などと比べても、月1回の算定ですから高点数とはいえないのですが、高脂血症や高血圧などで合併症のない安定した状態では月の受診回数も少なく、定期的な数ヶ月毎の検査以外積極的な検査もなく「生活習慣病指導管理料」の算定は医療機関にとってはかなりに有利な点数だといえます。
「ちなみに外総診は院外処方の場合は735点(月2回まで可で、月1470点)、院内処方の場合は月初回1035点、2回目735点で月2回受診なら1770点と設定されています。」

 しかし、全ての医療機関に有利な点数という問題だけでなく、後述するように色んな条件で患者負担が異なり、患者負担を強いる点数であることも分かりました。元々出来高制度と定率負担が基本の外来診療に、包括化診療制度を導入し、負担だけは定率に据え置いた弊害とも言えます。

 これらの慢性疾患の患者さんの今までの包括されない(出来高)点数と包括化された「生活習慣病指導管理料」の点数や自己負担を比べてみると、下記の資料(表-4、5)に示すように包括点数の場合2-4倍の自己負担アップになります。勿論このシミュレーションでは院外処方の場合を設定し、検査料は入れていませんので検査月には出来高の方が高くなることがあります。しかし包括化によって通常月の患者負担は大幅に増えることがおおいので、患者負担を考えればすぐに算定できない事情があるのです。

 もちろん「生活習慣病指導管理料」に、この自己負担のアップを納得できるものがあればいいのですが、安定期の慢性疾患では「療養計画書」の発行程度ではすぐに納得できるものはありませんし、安定した慢性期の「療養計画書」では特別変わった計画書も出せません。

 この様に包括化された「生活習慣病指導管理料」は色んな条件で、患者負担が変化するため、医療機関側で算定に二の足を踏む事になりますが、それはどんな場合かを少し検証します。

2012年6月2日土曜日

嘔吐と対策 / こどもふれあい広場 / 西日本新聞


 子供が吐きだすとあわてるものです。今回は嘔吐に関した質問を取り上げます。その原因は心配が無いものから重大な病気まで多彩です。
 吐き気を催した後に嘔吐するのが普通ですが、いきなり嘔吐と言う事もあります。
 嘔吐中枢は延髄に存在し、胃や腸などの消化器病、中枢神経病や中毒などが原因で刺激を受けると、嘔吐反射が起こり嘔吐します。
 また人の体は繊細に出来ており、微妙な感情にも左右され、いやな臭いを嗅いだり、不快なものを見たり聞いたりするだけでも大脳皮質を介して嘔吐が発生します。