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食欲をコントロールする消化管ホルモンのグレリンを増やし、食欲不振などを改善する
−六君子湯(りっくんしとう)
近年、肥満やメタボリックシンドロームの人が増加しているため体重減少につながる食欲抑制に注目が集まっていますが、実は食欲不振も健康上の大きな問題です。『六君子湯』はその治療法として有望視されていますが、その改善効果のメカニズムの一部を解明した新井誠人先生(千葉大学医学部腫瘍内科助教)らのグループの研究成果を、紹介します。日本消化器病学会の学会英文誌『Journal of Gastroenterology』で、2009年12月にオンライン版として発表され、 2010年3月には正式な論文として掲載されました。
背景: 食欲不振は、さまざまな病気における治療の妨げや高齢者での死亡原因となる栄養不良など、健康上の大きな問題を引き起こすことがある
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食欲不振は日常的によくみられるものですが、その原因に、COPDや腎機能障害、うつ病など、さまざまな病気が関わっていることがあります。このような場合には、食欲不振によって食事がとれないことが栄養不良や体力低下につながり、もともとの原因である病気自体の治療が妨げられるという、悪循環を引き起こすことがあります。特に、がん治療薬の副作用として起こる悪心・嘔吐などが引き起こす食欲低下は、がん患者さんの治療における大きな問題です。また、高齢者では食欲不振から栄養不良を招き、それが死亡原因となることも少なくありません。
頭痛、首の痛み、発疹、トゲ
『六君子湯』は、「人参(にんじん)」、「甘草(かんぞう)」、「生姜(しょうきょう)」、「蒼朮(そうじゅつ)」、「茯苓(ぶくりょう)」、「大棗(たいそう)」、「陳皮(ちんぴ)」、「半夏(はんげ)」などを構成生薬としており、胃腸の働きをよくする作用があります。上部消化管の機能異常が原因の一つとして考えられる食欲不振や胃部不快感、胃もたれなどの治療に用いられます。特に、日本の消化器専門医の間では、機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia, FD;胃もたれ・食欲不振・胃の痛みなどの症状があるにもかかわらず、器質的な病気、つまり内視鏡やX線などで組織自体の異常が検査できるタイプの病気、がないもの)の治療薬として認知され、使用されています。しかし、これまで、なぜ『六君子湯』がそのような症状に効くのか、メカニズムがわかりませんでした。
メリーランド州の患者の体重減少プログラムの
グレリンは、1999年に日本人が発見した食欲をコントロールするホルモンの1つですが、摂食促進、消化管運動促進、胃酸分泌促進などのさまざまな作用をもち、治療薬への応用も期待されていますが、日常臨床で使用できるまでにはもう少し時間がかかるようです。
新井先生たちのグループは、『六君子湯』が食欲不振に効果を及ぼすメカニズムのなかで、このグレリンへの作用が重要な働きをしているのではないかと考え、今回の研究を進めました。すでに他の研究者グループ(北海道大学・武田宏司教授ら)によるラットでの検討から、抗がん剤シスプラチンの投与に伴う食欲不振に『六君子湯』が有効な理由には、低下していたグレリンが回復することが関わる、と考えられたからです。新井先生たちは、『六君子湯』によるグレリンへの影響をより詳しく調べることにしました。健康な人を対象とした研究に加えて、作用のしくみ面での解明度合いを高めるため、同時にマウスでの実験も行いました。
なお、『六君子湯』はがん治療の副作用としてよく見られる「吐き気を伴う食欲不振」にも効果的と知られています。この作用メカニズムにも、抗がん剤投与により低下したグレリンを増加させることが関係していることを、別の研究グループが報告しています。
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