抗うつ薬(こううつやく、Antidepressant)とは、大うつ病・気分変調症・不安障害などの気分障害を緩和するために使用される精神病の治療薬である。これらの薬は多くの精神科医で処方されており、それらの効果と副作用は多くの研究で取り上げられ、それらには相反する主張が多い。抗うつ効果のある薬物は多く開発されているが、それらの使用のコントロールについて多くの論争を引き起こし、適用外処方については高い有効性があるが危険もはらんでいる。
典型的には抗うつ薬は作用は遅発性であり、通常数ヶ月から年に渡り投与されている。名前とは違うが、抗うつ薬はしばしば論争の対象となり、エビデンスは乏しいが次のような症状の治療のため適用外処方されている。不安障害・強迫性障害・摂食障害・慢性痛・いくつかのホルモンを介した月経困難症などがある。単剤または併用(デパコートなど)にて、ADHD・薬物乱用による抑うつにも使用される。また抗うつ薬はいびき・偏頭痛の治療にも時折用いられる。
うつ病に伴う不眠症やうつ病と不安障害が併発している場合、睡眠導入剤や抗不安薬としてベンゾジアゼピン[1] が不眠症や不安障害の治療に使用されることがある。しかしながらベンゾジアゼピンは身体的依存を引き起こす。ベンゾジアゼピンは治療を終了した時に突然不快な離脱症状を引き起こす。英国医薬品安全性委員会は1988年に、うつ病またはうつ病に伴う不安の治療にベンゾジアゼピンを単独で使用すべきではないと勧告している。[2]また英国医薬品再評価委員会はベンゾジアゼピンはうつ病に不適用と結論付けた。
プラセボも優位な抗うつ効果を持っており、抗うつ薬の認可にはプラセボよりも臨床試験にて優れた効果を持つことを示す必要がある。[3] FDAに提出された公開・非公開の両面の試験についてレビューを行ったところ、公開された試験では94%が抗うつ効果を示しているが、一方で非公開の文献では50%であった。[4] 組み合わせると、全体の研究では51%の有効性である。
[編集] 主な抗うつ薬
抗うつ薬は、次のような種類がある。
[編集] 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
詳細は「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」を参照
第三世代の抗うつ薬と呼ばれるものであり、フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)、パロキセチン(パキシル)セルトラリン(ジェイゾロフト),シタロプラム(日本未発売),エスシタロプラム(レクサプロ)が知られている。副作用が非常に少なく、扱いやすく強迫性障害、社会不安障害、パニック障害に適応がある。躁うつ病には禁忌であるが大うつ病では第一選択となる。効果発現に数週間必要であるため、即効性のある抗不安薬を4週間ほど併用するのが一般的である。投与初期(1〜2週間程度)は悪心、嘔吐、不安、焦燥、不眠といった症状が出現することがあるが継続投与で軽快、消失する。セロトニン受容体に対する急性刺激と考えられている。少量ではセロトニン選択性であるが、高用量となるとノルアドレナリンの再� ��り込みも阻害するようになる。
[編集] セロトニン・ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)再取り込み阻害薬(SNRI)
詳細は「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」を参照
第四世代の抗うつ薬と言われるもので、ミルナシプラン(トレドミン)、ヴェンラファキシン(エフェクサー)、デュロキセチン(サインバルタ)、ネファゾドン(サーゾーン)が含まれる。SSRIよりも意欲を高めるといった効果が期待されている。TCAのイミプラミンに近い作用となるがセロトニンとノルエピネフリン以外の受容体と相互作用をしないため副作用は非常に少ない。頭痛、口渇、排尿障害といった副作用は報告されている。
[編集] 三環系抗うつ薬(TCA)
詳細は「三環系抗うつ薬」を参照
もっとも古い抗うつ薬で1950年代に登場した。セロトニンやノルアドレナリンの再取り込みの阻害が抗うつ作用にかかわると考えられている。第1世代としては塩酸アミトリプチリン (トリプタノール、ラントロン)、塩酸イミプラミン (イミドール、トフラニール)、塩酸クロミプラミン (アナフラニール)、マレイン酸トリミプラミン (スルモンチール)、塩酸ノルトリプチリン(ノリトレン)。第2世代としてはアモキサピン (アモキサン)、塩酸ドスレピン (プロチアデン)、塩酸ロフェプラミン (アンプリット)が知られている。第3世代としての選択的セロトニン再取り込み阻害薬が登場してからは軽症、中等症のうつ病の第一選択からは外れたが2008年現在も使われている薬である。その理由としては抗コリン作用をはじめとした多くの副作用が存在するがうつ病の改善率が70〜80%と非常に高いことが理由にあげられる。TCAの抗うつ作用はほとんど差がないと言われているが[誰?]、患者によって特異的に有効なTCAが存在するのも事実である。抗コリン作用が軽快している第二世代の薬物から使用し、副作用に合わせて変えていくのが一般的である。特徴としては三級アミンは二級アミンと比べると、鎮静作用、抗コリン作用が強く、起立性低血圧も起こしやすい。鎮静と体重増加の作用はヒスタミンH1受容体に対する親和性と相関している。起立性低血圧はアドレナリンα1受容体との親和性に相関しているといったところである。またTCAは内服中断後、1週間は体内にとどまると考えられている。危険な副作用としてはキニジン様作用といわれる心臓障害がある。
- アミトリプチリン (トリプタノール、ラントロン)
抗コリン作用、鎮静作用が最も強いTCAである。若年者で入眠障害がある患者で好まれる傾向がある。就寝前に多く飲ませることが多い。
- イミプラミン (イミドール、トフラニール)
最初に作られたTCAである。アミトリプチリン よりも抗コリン作用、鎮静作用が弱いがノルトリプチリンよりは強い。起立性低血圧も比較的少ない。パニック障害に効果があることもある。
- クロミプラミン (アナフラニール)
セロトニンの再取り込み阻害作用が強い。痙攣がおこる頻度が他のTCAよりも強いため、抗けいれん作用の強い抗不安薬を併用することが多い。注射薬があるため、うつ病による不穏、焦燥に対して3時間程度で25mgを点滴静注することもある。
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